第1章 眠り姫
「それにね、ペリドットは夜に輝きを放つ宝石でもあるらしくて、暗闇に対する恐怖も打ち消してくれて負の感情から身を守ってくれる力も持ってるそうよ」
実際に光っているのは見たことはないけど、と笑っている。
「これを話したのは、日光が初めてよ」
手首にブレスレットを身に付けていることを知ってる刀達はいるとは思うけれど、
お守りとして身に付けていることや、なぜ馬蹄にペリドットなのかは話したことはなかった、と。
「では、物理的な災いから主を守るのは我々刀剣男士、ということだな」
「え…?」
「俺は、守ると決めたものは必ず守る主義だ。
ここに顕現した我々刀剣男士の今代の主は、貴女だからな」
「私なんかが、日光の守るものの1人に入っていいの…?」
目を丸くする主に、日光は当然だと言う。
主は守るべき存在であり、日光自身にとっては失いたくないものだから。
「主人を守れない臣下など、聞いたことがないぞ」
自分の主への想いが確信に変わってからは、その意思は一段と強くなった気もする。
臣下と主人の関係であることには変わりはないのだが、この想いを主に伝えて良いものかと考える時が度々ある。
…本来ならば、駄目であることは分かっている。
いつかは主にこの想いを伝えたい。
のに、自分の中では身分を弁えろ。
と、自分に言い聞かせて葛藤を繰り返している。
抱いてしまった感情を、簡単に消せないのも面倒なものだと思った。