第1章 眠り姫
「お守りとやらは、これのことか」
主の手首を掴んで引き寄せると、その飾りを間近で見る日光。
「そう。手首に付いてるこれ。小さいけど、馬蹄の形をした飾りが付いてるの。
現代の外国では、昔から馬蹄は魔除けや厄除けに使われているんですって」
「ほう?こんなに小さな飾りでも、そのような効果があるのか?」
「…あとは気の持ちようかな」
気の持ちようで何とかなるのなら、それでもいい。
主の身に、何も起きないのであれば。
「この時代の物ではないな」
「うん。肌身離さず身につけているから、現世から持ってきた物よ」
「なるほど」
小さな馬蹄の真ん中には黄緑色の宝石が一つ埋め込まれていて、その美しさが日光の目を奪った。
「この黄緑色の石は」
「和名では橄欖石(かんらんせき)、現世ではペリドットって呼ぶのが一般的かな」
審神者になる前から、お守りとして身に付けていた。
自分を照らしてくれる物が欲しくて、馬蹄にペリドットが埋め込まれたブレスレットをしている、と。
「ペリドット、か」
「太陽の石とも称されていて、まるで太陽のように輝きが強い宝石は身に付けている人の邪気を退けて災いを取り払ってくれるんだって」
確かにそれは主に相応しい宝石だと思った。
霊力の応報から身を守るために身に付けているのなら、納得がいく。