第1章 眠り姫
青白い光が放たれているのが見えて、主の手首を強く掴んだ。
「っなに?!どしたの?」
「主…っ!まさかまた、俺に霊力を…」
「あ…、これくらいなら影響ないから…」
「そう、か…」
霊力を使うことでまた眠ってしまうのではと心配になったが、主に何も影響がないならと掴んでいた手首を離した。
日光の頬にあった傷は、主の霊力によりなかったかのように消えている。
傷口が塞がっていたこともあって、主の霊力は最小限に抑えられているようだった。
「はい、返却」
眼鏡を差し出すと、日光は眼鏡を受け取って掛けた。
視界が戻って、少し安心した顔をしている。
救急箱を棚に片付ける主の姿も、はっきりと見えた。
「私の霊力は本来、こうして使うものだから。
曰く付きだけどね、あはは」
「…………」
「当然の報いだろうし、眠ってしまう事で皆には迷惑をかけているのは本当に申し訳ないなっていつも思ってる」
その曰くが、霊力を使った後に来る応報。
自分が長時間霊力を使って眠ってしまうことは自覚しているし、それを知っていて霊力を使っているのだから。
「私の霊力に関する事情を知る人は、少なくていいから」
「………!」
山姥切国広と同じことを言っていて、主が刀達にそう言ったのかと眉間に皺が寄る。
きっと主は、本当に信頼出来ると確信が持てた刀にしか打ち明けていないのだろう。
でなければ、事情を知る人数がこんなに少ないはずがない。
「魔除けのお守りになるものも身に付けてるから、そこまで深刻に考えないで」
ちらりと見える主の左手首。
その細い手首に付いた、小さな馬蹄形の飾りがついたブレスレットがきらりと光った。