第1章 眠り姫
なるほど、と思った。
山姥切国広や燭台切光忠が主を大切に思う理由は、霊力を使われただけではないのが理解出来た。
皆に慕われる主の人柄の良さも理由の一つだ、と。
「葡萄の世話ならば、任されよう」
「うん。お願い」
主の笑った顔に、胸が熱くなった。
以前から主のことを慕っていたが、たった今それが確信に変わった。
自分は主を好いている、と。
「………」
「ん、………主?」
肩に重みを感じて振り向いてみれば、主が寄りかかって眠ってしまっている。
「ふっ」
悪くない光景だった。
寄りかかってくるのは、頼られている証拠。
このままそっとしておいてやりたいところだが、主を横抱きで持ち上げて部屋へ運ぶと、そっとベッドに寝かせる。
自分が傍にいることで安心してくれているのなら、それもまた嬉しいと思った。
すやすやと寝息を立てる主の寝顔は、あどけなくて無防備で愛らしい。
「ゆっくり休め。おやすみ、主…」
前髪を掻き分けて、主の額に軽く口付けをした。
主が眠っている時にしか愛を囁くことが出来ない今の自分が、もどかしくて仕方ない。
このまま不寝番をしてやろうかと思ったが、
今日は近侍じゃないことを思い出し、主の部屋を後にした。