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日と月【刀剣乱舞】

第1章 眠り姫



「……日光…顔の傷、大丈夫なのかな…」
「無論だ」
「………ッ!!?」

主の少し後ろに立つ日光。
まさかいるなんて思っていなかったのか、びっくりした顔でこちらを見ている。

「………に、日光…驚かさないで…。心臓に悪いから」
「すまない、驚かせてしまったか。お頭に主の様子を見てこいと言われてな」
「だ、大丈夫よ。私によくある光景でしょう?」
「そうだが」

視線をまた空に戻してしまった。
主が縁側で空を眺めている姿は度々見かけてはいた。
が、時折遠くを見据えている気がする。

「…………日光」
「なんだ」
「少しだけでいいから。傍にいて、くれないかな」

こちらに目線はくれなかったが、主の口からはっきりと傍にいてと聞こえた。
少しとなど、遠慮する必要ないというのに。
主の傍らにいたいと思うのは、自分も同じだから。

「御意」

主の少し斜め後ろに腰を降ろす。
その気になって腕を伸ばせば、主に触れられる。

「山鳥毛に、心配してくれてありがとうって伝えて」
「必ず伝えよう」
「ありがと。ねぇ、隣に来て?」

主の隣に移動し座ると、主との体格差がよく分かる。
細く白い指が真横にあって、その手を握りたいという衝動に駆られてしまう。

「…以前から聞きたかったんだが」
「ん?」
「俺が顕現したばかりの頃は葡萄棚などなかったが、なぜ突然葡萄棚を作ったんだ?」
「……あぁ、それ?」

葡萄棚。
当時から主が何やら懸命に苗木を世話をしている姿は、度々見かけていた。
あれが葡萄の苗木だったということを知ったのは、主が1週間の眠りについて目を覚ました後だった。

「日光が顕現してすぐだったかな?日光が葡萄がないって言っていたのを、聞いちゃったから」
「!」
「私も葡萄は食べたかったし、いずれは日光に葡萄の世話を任せられそうって少し期待もしてた」

最初のうちは日光には黙っていて欲しいと光忠や山鳥毛にお願いしていた、と明かしてくれた。
あの時の一言を受け取って葡萄棚を作ってくれていたとは。

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