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日と月【刀剣乱舞】

第1章 眠り姫



「…ん、上出来だな」

仕込んでいた葡萄酒の味見をしている。
自分の味覚では甘みが強いが、葡萄本来の甘みだからこれはこのまま残しておきたい。
主は甘い物が好きだという話を耳にし、発酵はこれで終わらせることにした。

種や皮を搾って果汁をろ過し、果汁のみを別の容器に移し替えると地下の貯蔵庫で冷やす。
もうすぐ完成すると思うと、自分でも楽しみだった。



「えっ、葡萄酒が出来上がった?」
「ああ、今は冷やしている状態だ」

約束通り、葡萄酒の完成を主に報告した。
完成を待っていてくれた主が、とても嬉しそうな顔をしている。
主はちょっと待っててと小走りで自室へ行き、何かを持って戻ってきた。

「日光、見て」
「ん?何だ、それは」

緩衝材に包まれたまま保管していた、例のあれ。
時が来たら日光に見せようと思い、開けずに保管していた。

緩衝材の包みを開ければ、透明な食器が顔を出す。

「ほう、なかなか洗礼された器だな?」
「硝子で出来た飲み物用の器よ。なかなかお洒落でしょう?
私がいた現代では、グラスって言うの」

日光もグラスに興味を示してくれているようで、
葡萄酒はこれで飲もうと提案したら、快く良いぞと返ってきてホッとした。

「2つ、あるが」
「うん。だから、もう1つは日光が使うの」
「俺が?」
「葡萄酒を飲む時に…と思って買ったから」

なるほど、と納得していた。
そういうことなら使わずにはいられない。
すぐにグラスを洗い、布巾で拭きあげると自分専用の食器棚に保管する。

使う時は、あの葡萄酒が飲み頃になった時。

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