第1章 眠り姫
「ただいま」
「ただいまー」
買い物を終えた光忠と主が本丸に帰還した。
「おかえり、小鳥。何を買いに行ったのかな?」
「食器よ」
厨房へ行くと、買ったばかりの食器を包んでいる緩衝材を開く。
中には茶碗と汁椀、湯呑み、箸、箸置きが3つずつ入っていて。
先日顕現した髭切、小狐丸、日光の分の食器がまだなかったから買いに行っていたのだと。
主は刀剣男士が顕現する度に、1人1人に食器を買ってあげている。
せめて食器くらいは、自分専用の物を使ってほしくて。
お陰でこの本丸の食器棚は、色も形も大きさまでもが様々な食器が置かれている。
「ほう?なかなか洒落た陶磁器の食器だな?」
「流石ね、山鳥毛。なかなか美的感覚を持っていらっしゃる。
太刀の皆は結構食べるから、大きめにしたんだけど…大丈夫かな」
焼き物で有名な街から、わざわざ出向いて売りに来た陶芸家から買ったと話す。
食器の綺麗な絵柄に惚れたのだと。
「これは、私が使うものよ」
まだ緩衝材に包まれたままの食器が、主の側に置かれている。
刀達の食器を先に洗い、自分用に買った食器は時が来るまで自分の部屋にしまっておくことにした。
*
自分の部屋に1人。
机に置いた緩衝材に包まれたままの、まだ開けていない食器を眺めた。
「…嫌がる…かな…」
とりあえず、今はあれの完成を待とう。
話はそれからだ。
それまで待つと決めたのだから。
約束、したから。