第1章 眠り姫
「日光、急にどうしたんだ?」
「…何でもない。ただ、もっと強くなりたいと思った、それだけだ」
「俺で良ければ、手合わせ頼む」
「こちらこそ、よろしく頼む」
互いに一礼して刀を構えると、先に仕掛けてきたのは日光だった。
*
道場で手合わせをする山姥切国広と日光。
刀と刀がぶつかり合う音が響いている。
実戦経験も手合わせの数も、他の刀達より圧倒的に多い山姥切国広。
おまけに修行の旅に出て自分の在り方を見つめ直し、精神的にも強さを手に入れて。
「……く…っ。やるな、山姥切国広…」
「俺は主のための刀。強くなりたいと思うのは俺も、同じだ!」
「………っ!」
ぶつかってくる刀の動きと重みから、山姥切国広の強い覚悟が伝わって来る。
身のこなしと実戦経験から来る刀の扱いは、圧巻の一言でしかない。
主のための刀だと自ら言い切ってしまうのは、凄いことだと思った。
願わくば、自分もそうありたいと思っている。
「強い、な…。っはぁ、は…っ、………っ」
「……あんたもな…。はぁ…、…、はぁ…ッ」
互いに汗で髪が湿り、息が上がる。
袖で額の汗を拭って、もう一度刀を構えた。
「俺はまだ、いけるぞ…」
「ああ、俺もだ。…行くぞ、日光!」
またもや刀と刀のぶつかり合いが繰り広げられた。
お互いに手加減など一切ない、本気のぶつかり合いをしている。