第1章 眠り姫
「うぅ、重たい…!詰めすぎたかな…?!」
主は葡萄が入った籠を持ち、不安定な足取りでこちらに向かおうとしている。
「さて、私も手伝うとするか」
「お頭の手を煩わせる訳にはいきません。俺が」
日光は葡萄を運ぶ主の下へ向かっていった。
「貸せ、俺が運ぶ」
「に、日光…。これくらい大丈夫だし…」
「…まったく……主は無理をしすぎる」
日光がひょいと籠を取り上げれば早急に腕が軽くなり、びっくりして日光の方を見てしまった。
普段の日光なら自分で運べと言うかと思っていたから、持ってくれるなんて思っていなかった。
「…どうした」
「……いいえ、持ってくれてありがとう」
「重たい物を主1人で運ばせるほど、俺は鬼ではない」
この葡萄を厨房へと運んでほしいと頼めば、日光は本当に厨房へと運んでくれた。
その2人の後ろ姿を見ていた山鳥毛は、クスクスと笑いながら見送った。