第1章 眠り姫
翌日。
葡萄の収穫をするために日光に手伝ってもらおうと、一文字一家の部屋を覗く。
「小鳥よ、おはよう」
「おはよう、山鳥毛。日光は…いなさそうね」
「日光の兄貴は今日近侍だから執務室に行ったはず、にゃ」
「あ…っ。ありがとう南泉!」
執務室に行くと、南泉の言った通り白い戦闘装束を着た日光が壁に掛かっている部隊一覧を見ている。
その佇まいに近寄り難い雰囲気を感じ、執務室の扉を静かに閉めた。
「……はぁ…」
まずは仕事をしなくては。
主は深呼吸を一つし、改めて執務室の扉を開いた。
「おはよう、日光」
「…ああ、おはよう」
今日の任務内容と遠征部隊の割り当てを考える。
「今日は日光が近侍だったわね」
「ああ、よろしく頼む。…今日は、着物ではないのだな」
「ええ、今日は葡萄の収穫をするから。
日光も朝の遠征部隊を送り出したら着替えてきてね、その白い戦闘装束を汚したくないもの」
「分かった」
以前、主の葡萄収穫を手伝う約束をしていた事を思い出す。
朝の遠征部隊を送り出した後、日光がジャージに着替えて執務室に戻ると主は道具の用意をしていて。
収穫ハサミを手に取り、チョキチョキと音を鳴らしている。