第1章 眠り姫
ベッドに下ろしてもらうと、日光は主の向かいに膝を付いて足に怪我がないか確認している。
「運んでくれてありがとう」
「気にするな。怪我は、していないようだな」
スッと立ち上がると、主の頭に手を乗せて撫でる。
「…くれぐれも、無理はするなよ」
「…………!は、はい…」
「では」
念を押して部屋を去ろうとした時、袖を掴まれた。
「……あ、あれ…?手が勝手、に………」
苦笑いをしながらすぐに手を離し、気にしないでと言う。
1人になりたくないという、無意識下の行動だろうか。
「どうした」
「…ごめんなさい。私は大丈夫だから、戻って構わないわ」
「…そうか。何かあれば、すぐに誰かを呼ぶんだぞ、いいな?」
「…………」
そこは自分自身じゃないんだなと自分でも思いながら主の部屋を出たが、自惚れたくない。
いずれ主の周りには、他の刀達が見舞いにやって来る。
扉の向こうへ出て、廊下を歩いていく。
廊下の向こうからは藤四郎の短刀達が2〜3振やって来て、主の部屋へ出入りを繰り返す。
主が目を覚ましたと誰かから聞き付けたのだろう。