第1章 眠り姫
「それもあるが、半分は俺の意思だ」
「…私が審神者で、この本丸の主だから?」
「それも理由の1つではある」
言える訳がない。
主を好きになってしまった、なんて。
彼女を困らせるだけだ、と。
「…みんな大切な刀よ。こんな本丸に顕現してくれて、本当に感謝してる。
だから私も、みんなの良き主として頑張らないと」
涙を拭い、笑ってみせる。
そんな主の背に触れ、掴んでいた手首を自分の方へと引っ張ると腕の中に閉じ込める。
「…………」
「…日光?」
「何だ」
「貴方、検非違使を相手にする直前に、命捨てるぞとか言っていたそうね」
確かに言った。
主命とあらば、自分の命など惜しくないと思っていたから。
この時までは。
「…いくら主命だからと言って、そんな風に自分の命を粗末にしようとする人は嫌よ。
……なーんて、私も人の事言えない、かな…」
日光の腕の中で、ぼんやり考えた。
霊力を使って、下手をすれば自分が命を落とす危険があること。
今は加減をしているから眠りに付くだけで済んでいるが、最悪の場合は…と。
「今回は流石の私も、霊力を使いすぎて死ぬかもってどこかで思ったし」
「…………!?」
日光の腕の力が強くなる。
なぜ主が、自分なんかのために命を犠牲にする必要があるのかと言わんばかりに。
そして、周りに四角四面だと言われてきた自分が、この主には死んでほしくないと思ってしまった。