第1章 眠り姫
「皆が命を懸けるのなら、私も命を懸けないと」
「…………」
「日光?」
「…主が癒しを与えてくれたお陰で、俺はこうしてまた戦うことが出来ている。感謝している」
キュッと強く握られる手からは、その想いの強さが伝わってきて。
「とんでもない…。日光が元気になったみたいで何よりよ。
…ほら、この前深手を負って帰ってきたでしょ?
急所は避けていたみたいだけど、日光、意識がなかったし正直焦っ…た…」
山鳥毛に、自分よりも日光の手当てを先にと言われて霊力を使った。
一文字一家の翼を失いたくないという気持ちが山鳥毛から伝わってきたから、それに応えた。
「…日光が折れてしまったらどうしようって…、それが怖…くて…」
無我夢中だった。
自分も報いを受けると分かっていても山鳥毛の望みを聞きたかったし、日光に折れてもらっては困るから。
視界が滲んで、零れた涙が頬を濡らした。
「…………っ」
「…主、どうした」
「ごめんなさい…泣いてしまって…。
すぐに、ここから出て行く、から…」
部屋に戻り、誰にも見られたくないから1人で泣けばいいと思った。
立ち上がって部屋に戻ろうとした主の手首を掴んで、日光は隣に座ってくれる。
「1人にはさせない」
「………山鳥毛に言われたから、でしょう?」