第1章 眠り姫
「………」
自分が大事に育てた葡萄。
房から1粒もいで食べる。
「…うん、甘い。明日収穫しよう」
「主」
「日光…」
葡萄棚に日光一文字がやって来た。
日光にここを教えた覚えもないし、何故ここに来たのか尋ねれば、
山鳥毛が気を遣って主を1人にさせないようにと居場所を教えられたと話す。
「…そういうこと」
日光は目の前に広がる葡萄棚に、目を奪われているようだった。
「これは、葡萄か」
「そうよ、いいでしょう?私が頑張って育てたの。
近々収穫するんだけど、手伝ってくれないかな」
「ああ、任されよう」
驚いている。
まさかこの本丸に葡萄棚があったなんて、と。
…いや、それだけではない。
目の前に、想い人がいるのだから。
「主」
日光は縁台に座る主の前に跪き、手を取るとそっと握った。
あの時の礼を言わなくては、と。
「ん?何か?」
「長い期間眠ってしまうほどの霊力を使わせてしまったようだな。すまなかった」
「あぁ。いいの、気にしないで」
主は、これは負傷した刀達を治癒するためにあるのだからと笑っている。
そのために自分を犠牲にするのはどうかと思うのだがと言ってみたが、真剣な言葉が返ってきた。