第1章 眠り姫
畑の横にある葡萄棚。
「これは立派な葡萄に成長したものだな」
「頑張って育てたもの。そろそろ収穫出来そう」
縁台に座らされ、隣には山鳥毛が座る。
「収穫は我が翼…いや、日光に頼るといい。力仕事は任せられるはずだ」
「…頼んでみる」
「…頑張るのはいいことだが、くれぐれも無理だけはしないようにな」
主が霊力を使う姿をこの目で見てしまい、力を使い過ぎるとああなるのだと知った。
それを既に知っているのは、薬研藤四郎と山姥切国広、燭台切光忠、三日月宗近、山鳥毛の5振。
この刀達は主のことを特に大切にしている。
「主、目が覚めたんだってね。良かったよ」
「ありがとう、光忠。心配かけてごめんなさい」
「気にしないで、主が目を覚ましてくれただけで充分だよ。
葡萄、立派に育ったね。いい匂いがする」
「もう収穫出来そうよ」
「そうだね、張りのある良い実が付いてる」
光忠は主が頑張っていたからだね、と労うように言ってくれた。
料理が得意な光忠には、何房か渡すつもりでいる。
この人の腕前で、この葡萄がどう調理されるのかが密かに楽しみで。
「じゃあ、僕は夕餉の支度をしてくるよ。
主、体調が悪いなんてことはないよね?」
「ええ…」
「今日は張り切るから、楽しみにしてて」
「私も仕事に戻らなくては。小鳥よ、1人でも大丈夫かな?」
「ええ、大丈夫よ」
また後でね、と手を振りながら葡萄棚を去っていく光忠と山鳥毛を見送った。