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日と月【刀剣乱舞】

第1章 眠り姫



「………、……れ…?」

目が覚めると、板張りの天井が広がっている。
首を横に動かせば目線の先には日光一文字…ではなく山鳥毛がいて、目が合う。

「小鳥、目が覚めたのか?」
「…さ、んちょ…も…?」
「ああ。つい先程小鳥の様子を窺いに来た山鳥毛だ。
小鳥よ、無理に囀る必要はない。今、薬研を呼んでこよう」

すぐに薬研がやって来て、主が目覚めた事に安堵し喜んでいた。

「良かったぜ、大将。1週間も眠り続けていたんだぞ?」
「…1週間も?」
「ああ、最長記録更新だ」

念のために容態を確認してもらった。
心拍数も安定しているし、大丈夫だろと言われる。

「日光の旦那も呼ぶか?」
「うちの本丸に、そんな名前の刀は…」

「眠りすぎて、俺の事も忘れてしまったか?」

主が目を覚ましたと小耳に挟んだ日光が部屋にやって来て、仁王立ちで立っている。

「…いた、いた。覚えてるよ」

夢の中で一緒に葡萄を収穫していた刀。
この葡萄で葡萄酒を仕込みたいと申し出て、出来上がったら一番最初に報告しようと約束をしてくれた。

「……そうだ、あれは」

主はゆっくりと起き上がり、部屋を出るために歩を進める。
畑へ行かなきゃ、と寝起きでおぼつかない足取りで部屋を出た。

「はぁ、眠っていた期間が長かったからかな…、力が入らないや…」

廊下にぺたんと座り込んでいると、後ろからふわりと横抱きで持ち上げられる。

「小鳥は私が運んでやろう。行きたい場所を言ってくれ」
「…あ、葡萄棚の様子を見たくて…」

ああ、そうだったなと山鳥毛は微笑みながら言う。
葡萄棚を作る時は、山鳥毛や燭台切光忠が手伝ってくれていたから。

「小鳥」

そして耳打ちをした。
葡萄が実を付けているぞ、と。

「本当?」
「ああ、本当さ。小鳥が頑張っていたからだ」
「じゃあ、連れてって」
「よしきた。少しの間、私に身を寄せて首に腕を回していてくれ」

言われた通り山鳥毛の首に腕を回すと、しっかり掴まっていてくれと念を押し廊下を歩いていく。

その様子を、日光が後ろで見ていた。

「…………」

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