第1章 眠り姫
**
「日光、今日も葡萄の収穫を手伝って」
「相分かった」
「今日はこっちの葡萄棚」
主の部屋の前にある葡萄棚。
ここの葡萄は黒ではなく、白い葡萄。
「黒ではない葡萄、か?」
「そう。黄緑色してるけど、白葡萄って言うのよ」
「ほう…。収穫したらこちらも分けてくれないか。
白葡萄の酒も興味深い」
「ええ、もちろん」
日光と一緒に白葡萄の収穫をした。
彼は葡萄が好きなのだろうか、とても楽しそうで生き生きしている。
「完成したら、一番最初に主に報告しよう」
「わあ、ありがとう。約束よ」
「約束しよう」
普段は無愛想で無表情なのに、約束をしてくれた日光の表情が少しだけ優しく見えた。
**