第8章 因果呪縛を解く
結局、高専の応援も最短では来られず、応援が到着する頃には伽那夛がほぼすべての呪霊を狩り尽くしていた。
地獄のようなあの任務に要した時間は……
「2日、と少し。あんなの二度と御免よ……でもずっと連続で術式を発動し続けていた訳じゃないわ!それに無下限呪術は私の術式より遥かに緻密な調整が必要よ」
何せ原子レベルにまで干渉する術式だ。
疲労した頭で力任せに使えるような代物ではない。
苦々しい顔をした伽那夛の返答に甚爾は五条悟は伽那夛以上術式を継続できるという見込みを頭に入れる。
「……ねぇ、もし私が悟にこのことを告発したらどうするの?」
「俺のことがバレたら俺と繋がってるオマエの首も危ねぇんじゃなかったか?」
「本ッ当に意地悪ね!ええ、そうよ!一蓮托生よ!」
その後もいくつか質問に答えていく度にタダ働きになるとしつこく制止を入れてみたが、何を言っても無駄だった。
料亭の前で別れた甚爾の背中が見えなくなるまで見送り、伽那夛も踵を返す。
甚爾の意思は変わらない。
それを嫌という程思い知らされ、深くため息を吐いた。
思い出すのは彼と初めて出会ったあの日の言葉。
―だいぶ前からあの家は見限ってる。オマエが想像しているのは、俺にとっちゃ過去のことだよ―
「……何が過去のことよ、全然諦めてないじゃない。やっぱりあなたも悔しかったんじゃない」
……待って、
口から出た言葉にはたと気づき、目を見開く。
違う、以前ならこんな成功率の低い仕事なんて絶対にやらなかったはずだ。
変わったのはおそらく数年前、
急に態度が投げやりになった。表情が暗くなった。
何かあったのか聞いても“何もない”の一点張り。
それから少し経った後に幼い津美紀と恵に引き合わされた。
あの時はまさか子供がいるなんて思っていなかった伽那夛は驚くばかりだったし、甚爾が自分じゃ世話しきれないと抜かすから怒ったが……
あれは、自分がいつ死んでもいいように準備をしていた……?
伽那夛は唇を強く引き結んだ。
それなら今回の仕事を受けた無謀さにも納得がいく。
……同時に何も言わずに捨て身になろうとしている甚爾に腹が立った。
「あぁもうっ、こうなったらこっちだって徹底的にやってやるわよ!」