第8章 因果呪縛を解く
交渉を終え、孔と別れた伽那夛は真っ先に東京高専にいる家入に電話していた。
「もしもし硝子先輩、悟って生きてます?」
甚爾はああ言っていたが、あの五条悟が殺されたというのはそう簡単には信じられない。
だが、
『高専内で大規模な戦闘跡があってな、そこに五条の血痕があった。なのに本人がいない」
「それなら生きてます?」
『あの出血量じゃ怪しいな。少なくとも自力で動けるような傷じゃない。六眼目当ての誰かが持っていったのかも』
「でも侵入者は高専の結界に検知されたら警報が出ますよね?高専内の人物が悟を連れ去ったということですか?」
『五条と戦った奴が大量の蝿頭を放ったんだ。おかげで警報は鳴りっぱなし、侵入者がいても分からん』
「そういうことですか……忙しい中ありがとうございます」
甚爾本人は結界を素通りし、侵入してから蝿頭を放って撹乱、高専の結界仕様を逆手に取った訳だ。
もし甚爾の言った通り悟が死んでいた場合、五条家は大騒ぎになる。
何の音沙汰もないということは、生きているか、まだ伝わっていないか、遺体を探し回っているか……
その辺りの情報収集は家の者に任せて高専に溢れた蝿頭の祓除を手伝った方がいいかと考えていると、伽那夛の行く先に立つ人影が。
「伽那夛じゃん、なんでここにいんの?」
そこに立っていたのは悟だった。
普段とはあまりにかけ離れたその姿に伽那夛は大きく息を呑んで立ち尽くした。
乾きかけているが、大きく切り裂かれた制服にはおびただしい血痕があり、白銀の髪もあちこちに血糊がこびりついている。
反転術式で治したのか、傷は見当たらない。
甚爾に殺されそうになった時に反転術式が使えるようになったということか。
……別にそれ自体は特段驚くことでもない。
今際の際に覚醒する術師は多くいるし、彼ほどの天才になれば尚更。