第8章 因果呪縛を解く
鬱屈した気分を切り替えるために、今度は破壊する呪物について考える。
その昔、この一帯に多くの悪霊が出て村の人々を苦しめていた。
そこへ山神がやってきて悪霊を倒し、村に平和をもたらした。
かつて村人が祈りを捧げていた御神体は、その山神が悪霊を倒す際に使った武器だという。
それが長い年月をかけて人々の思いを受け続けて呪物となっていったのだ。
こういった呪物の回収や破壊はその前が大変なことが多い。ほぼ確実に信仰している人々の反対があるからだ。
そういう抵抗のない山奥にあるというのは伽那夛にとって都合が良かった。
それにどんなに大きくとも呪物は呪物。その場から動かないし、反撃もない。多少硬かったり、結界で守られていたとしてもなんとでもできる自信はある。
道とも分からぬ道を2時間ほど登ると、目標の呪物が見えてきた。
「……大きいわね」
破壊対象は伽那夛の背を優に越える大岩だった。
黒く変色した注連縄が巻かれた苔むした大岩に近づくと、おどろおどろしい呪力を帯びているのを肌で感じる。
これが呪霊だったら少し手こずったかもしれない。
脚に呪力を込め、大岩を蹴る。
一撃目は少し表面が欠けた程度。
ならば、と靴のエッジを出して呪力出力を上げて思い切り蹴り込む。
ビシリと鈍い音を立ててヒビが入り、更にその点に三撃目を入れると、大岩は砕け、ガラガラと崩れた。