第8章 因果呪縛を解く
一方、東京高専でも事態は大きく動いていた。
五条、夏油、天内、黒井の4人が沖縄から帰り、無事高専の結界内に入ったことでようやくホッと肩の力を抜いたその時、背後に忍び寄っていた甚爾が牙を剥いたのだ。
天内を守るため、夏油が黒井と共に天内を連れて薨星宮へ急ぐ間、五条と甚爾の激しい戦闘になり、天逆鉾で強制的に無下限呪術を解かれた五条が敗れた。
甚爾は血溜まりに沈む五条を無感動に眺める。
……呪術界の頂点、最強の術師を捩じ伏せてやった。
予想より呆気ない幕引きだったが、そうなるよう仕掛けたのも自分なので、思うところも特にない。
さて、残るはあと一仕事。
星漿体が逃げた道には3人分の足跡が残されており、これを辿ればすぐに追いつく。
後から駆けつけてくるであろう応援の術師は五条との戦闘で出した蝿頭の群れが足止めするだろう。
残る護衛の夏油傑も五条悟ほど強くはない。
ある懸念から殺せないが、それでも苦戦するような相手ではない。
出した武器をすべて武器庫呪霊に格納し、その呪霊を飲み込み、甚爾は歩き出した。
日々その位置が変わるという薨星宮の入り口も足跡や扉を開けた際の手の跡ですぐに判明し、中へ入って更に足跡を追って森を進んでいくと、周囲の景色に似つかわしくないエレベーターが見えてくる。
足跡はそこで途切れていることから、星漿体はこの下に降りたのだろう。
エレベーターの扉をこじ開けようと手を掛けたまさにその時、孔の緊急用の番号から着信が入った。
出ると電話口から伽那夛の声が。
『この仕事は取り下げよ。今すぐ引き返して』
「なんでオマエがこの番号使ってんだよ」
『脅されたんだよ、このお嬢ちゃんに。俺は今まさに頭カチ割られそうだぜ』
『脅してないわよ!お願いしただけ」
孔に代わったと思ったらすぐ伽那夛が横から口を挟んでくる。
どうやら孔に電話を掛けさせたらしい。
「取り下げってどういうことだ?」
『言葉の通りさ。なんとお嬢ちゃん、盤星教に単身乗り込んできてクライアントを説き伏せちまったんだよ、「今の星漿体を殺してもすぐに次が現れる。殺すのは悪手だ」ってな』