第8章 因果呪縛を解く
「ははっ、いいよ、私が海外に逃してあげる」
「あなたに頼んで正解だったわ」
2人は固く握手し、伽那夛は自然と口角が上がる。
また1つ交渉カードが増えた。
ここまで集まれば後は盤星教へ乗り込むだけ。
ようやく多少の余裕ができた伽那夛は気になっていたことを尋ねてみることにした。
「1つ聞いていいかしら?」
「何?」
「少し不思議だったのだけど、あなたはなぜ星漿体の同化を阻まないの?」
元星漿体なら同じ星漿体を助けるために今回のような場面で動いてきてもおかしくないし、特級術師ともなれば決して不可能ではないだろう。
しかし、伽那夛の予想に反して九十九は難しい顔だ。
「……星漿体はその時代に1人しかいないという訳じゃない。皇位継承順位みたいなもので、1人目がダメなら2人目、3人目と移っていくものなんだ」
しかも星漿体の“天元の魂と適合する”という条件は親類縁者だからといって当てはまることではない。
日本の全人口から星漿体になり得る肉体を持つ者を1人ずつ探し出して保護することなど九十九1人では到底できないのだ。
それに仮にできたとしても、結局呪術界のシステムが変わらない限り、星漿体は生まれ続けてしまう。
「だから、私は原因療法にシフトした」
「原因療法?」
「呪霊を狩るんじゃなく、呪霊の発生をゼロにしようって方法だよ」
五条家で生まれ育った伽那夛には思いつきもしなかった視点だ。
ハッとするのと同時に疑問が浮かぶ。
「でもそもそも呪霊って元を辿れば人間の負の感情でしょう?負の感情をゼロにするなんて絶対にできないわ」
「呪霊の元になる微弱な呪力はほぼ非術師から漏出するものだ。術師からはほとんど漏出がない」
「術師でも呪力で殺さなければ呪霊に転じるわ。それもより厄介な呪霊に」
「そうだね。ならばどうするか、人々が呪力を持たなくなればいい」
「はぁ!?」
あまりに飛躍した理論に伽那夛はついていけない。