第6章 貴方って
「全く。みなみさんも大変だな」
軽く溜息をつきながら助手席の窓をあける零。
その様子も沖矢さんは相変わらず変わらない表情で見ていて...
変装マスクを付けているのなら、表情が中々変わらないのも納得が行く
零がこんなにも呆れた様な姿は初めて見る...
「どうも。お久しぶりです」
「おや、これまた奇遇ですね」
「また貴方に会わなければならない日が来るとは思わなかったです」
「そうですね。確か最後にお会いしたのは...」
「思い出さないで頂いて結構です。それにしても、貴方は毎回良いタイミングで現れますね」
「と言うと?」
「そうですね、まるで。監視しているかの様に」
「ホォ...私が貴方の事を、という事ですか?生憎私にそういう趣味はありませんね」
「惚けるな。僕の事ではない、みなみさんの事だ!」
『あ、安室さん...』
零の口調に驚きつつも、このギスギスとしたやり取りに挟まれるのは正直居ずらくもあって。
ただ、零の言う通り沖矢さんはいつもタイミング良く現れる。
初対面の時も、あの時も...
「ごめん、みなみさん...」
少しハッとした零の言葉はまたどこか弱々しくて。
『大丈夫だよ』
私の言葉で、また元の“安室透”に戻る。
きっと今さっきのは降谷零としての姿だったのだろう
「あの...大丈夫でしょうか?」
「えぇ。それじゃあみなみさん、呉々も気をつけて。それと...」
“さっき話した事を考えておいてくれ”と沖矢さんに聞こえない様に耳元でそう言われた。
『う、うん。送ってくれてありがとね』
「はい、それではまた」
もうすっかり安室透に戻っていた。
車から降りて、零の車が少し遠くに見えるまで無言でその場に居た。