第5章 交差
僕の素性を知る風見達以外から労られる日が来るとは。
僕を知るからこその言葉なんだろう
伝わっているよ、みなみさん。
部屋を出た瞬間から、僕はもう安室透に戻らないといけない。
安室透でもバーボンでも無い、本当の僕とこうして接する女性はみなみさんが初めてだ。
毎日が目まぐるしく、常に何かに追われ、追いながら身分を隠している生活は僕自身が分からなくなる時もあり、当然ながら安らぎなんて物は存在しない
そう思っていたのに、まさかこんな形で…
こんな出会いがあるとは。
『夜のみなとみらいも本当に素敵…』
僕の隣を楽しそうに歩くみなみさんを見ると、先程の姿が浮かんでくる。
今はまるで無垢な子供のようなのに、服を脱がすと露になるのは白く洗練された体で、僕を呼ぶその声も顔も……
みなみさんをデートに誘ったのは勿論探る為だった。
なのに…気付けば僕自身がみなみさんに夢中になっている。
駐車場について車の中へ。
車内でも手を繋いだりしたまま車を走らせる零の横顔は、行きとは少し違う見方になったり。
かっこいい事には変わりないけどね
ただ、どうしても沖矢さんを思い浮かべてしまって…
思い浮かべるというよりも、リンクさせてしまう。
冷静になってくると、零とこんな事をしておきながら今度は沖矢さんに凄く会いたくもなってしまって。
そんな事を考えながらも、また他愛もない話をしているとあっという間に
米花町に入っていた。
ホテルの名前を言うと直ぐにホテル前まで着いた。
「みなみさんと居る時間はあっという間だったな、楽しい時間をありがとう」
『こちらこそ、零に話せて良かったよ。ありがとう』
「本当に部屋まで送っていかなくていいのか?」
『うん、大丈夫だよ。零も気をつけてね』
「そこまで言うなら…。 勿論、みなみさんもな。」
軽いキスをしてお互い名残惜しさを残したまま零の車を降りた。
ホテルに入っていくまで見届けてくれた零。
直ぐにスマホを確認するとメッセージと不在着信が合わせて30件以上届いていた。