第25章 新しい生活は
『ごめんなさい。やっぱり、大丈夫です』
「そうは見えませんが?」
『貴方に、頼る訳にはいかないので…』
これ以上は一緒に居れないと思い、ソファに置いていたバッグを手に取り
玄関へ行こうとすると腕を掴まれた。
「ここまで話しておいてそれは少々心外ですね」
『ごめんなさい…』
「彼との間に何があったのかは分かりませんが、話すだけで楽になる事もあると思いますよ」
確かに彼の言う通りだ。
どうしてそれだけなのに、こんなにも安心してしまう自分が居るのだろうか
『でも、貴方には…ほら、その』
「なんでしょう?」
『貴方には大事な人が居るって、この間…』
「ええ。まあ、その人は私の事等忘れて、どこかに」
彼の腕を掴む手に力が入ったのを感じた。
つまり、この人は別れた人が忘れられないという事なのだろうか。
もしそうなら、何というか、あまりその辺に気を使う必要が無いのかもしれない
「おっと、これは失礼」
彼の手から解放されると、何故だか視線を合わせるのが恥ずかしくなった。
『その、なんと言えば良いか…』
彼は小さく首を傾げた。
『安室さんとは訳があって今住まわせて貰ってて…だけど、彼の…本当の姿は違うのかなって』
「ホォ…と、言うと?」
『んー…彼に、何か嘘を付かれているのかなって。私今記憶が無くて…だから、何も思い出せないし彼に監視されている気がして…』
「成程、それは彼の元に帰るのも不安になりますね。それがどの様な秘密かは分かりませんが、貴女を守る為の嘘という線もありますね」
『嘘…?』
「ええ。身分を偽る理由が彼なりにあると思いますよ」
『そう、なんですかね…』
「記憶が無いとの事ですが…心当たり等は?」
『それも病院で診てもらっても結局原因不明で…周りの人も私がどこに住んでいたのかを聞いても濁されたりで…』
「それは少々怖いですね。病気でも無ければ外傷もない…まるでどこか別の場所から来たみたいですね」