第25章 新しい生活は
目の先に来た彼がスマホを覗いた。
「成程。今貴女は彼からの連絡に応答したくないと言う訳ですね」
『したくないって言うか…』
「手が震えていますよ」
彼にそう言われて気付いた。
震えている手は彼の温かい手に包まれて、少し落ち着きを見せた。
『あっ、ちょっ…!』
「そんな状態なのに、冷静な対応が出来るとは思えませんね」
鳴り響いていた着信音は彼の手によって止まった。
『だけど、!』
彼に奪われたスマホを再び手にすると今度は安室さんからメッセージが届いた
“みなみさん、今どこに居るんですか?”
“戻ったら居なかったので。心配です”
やっぱり安室さんは一度戻ってたんだ…
あの時みたいに怒らせてしまっていると思ってたけど、今回は普通に心配をかけてしまっただけなのかもしれない。
「ホォ…“友人”の筈の彼と二人で住んでいるのですね」
『それは…ちょっと色々事情があって』
気の所為かは分からないけど、彼は優しくて礼儀の正しい口調な筈なのに
どこか怒りの様なものを感じるのは何故?
「色々。とはなんでしょうか?」
そりゃあ、こうなった経緯を彼に話せたら楽になるだろう。
だけどそんな話を会って間も無い人が信用をする訳が無いし
真純ちゃんにも話してはいけないと言われているし
かと言ってそれを誤魔化して彼を納得させる様な言葉が思い浮かぶ訳でも無かった。
「貴女は助けを求めている」
「違いますか?」
首を縦に振りたかった。
だけど、あの時の会話を思い出すに彼には恐らく恋人が居る
そんな人に頼れる訳が無いし、心を弾ませていた時があった自分も嫌になる
どうして彼がここまでしてくれるのかは分からない。
けど、頼るわけにはいかない