第24章 その先に待っているもの
『えっと、詳しくは分からないけど…
実は安室さんは悪い人、とか…』
恐れながらも振り絞った言葉に対して安室さんはクスッと少し笑みを浮かべたのが見えた。
『怖い。だって…分からない事が多すぎて
自分が誰なのかもよく思い出せていないって言うのに、貴方の事もよく分からない、この先だってどうなるかも分からない
「みなみさん」
被せる様に安室さんに名前を呼ばれたのと同時に
膝の上に置いていた手の片方にじんわりと暖かい温もりを感じた。
それでも自分の口から発せられる言葉は止まらなかった。
『貴方の事も…怖い…』
そう言葉を零すと触れていた手の力がゆっくりと緩んでいくのが分かった。
思わず溢れ出した言葉に自分でも少し驚いた。
緊迫していた空気が、どこか少し緩くなった気がした。
「みなみさん…」
手が離れて、漸く口を開いた安室さんからは、
さっきみたいな威圧感に近いものは感じなかった。
というより、どこか悲しそうで。
安室さんは短く息を吐く様に一瞬笑った。
「本当に何も覚えていないんだな」
少し俯き様にそう言う安室さんの姿はやっぱり悲しげでもあって
そして儚くも見える
『安室さん…?』
こんな姿を見るのは初めてだから、少し戸惑ってしまう
この様子を見るに、もしかしたら私達は本当に何か深い繋がりがあったのかもしれない。
「ああ、ごめん。みなみさん」
『いえ。えっと…』
なんて言葉をかけて良いか分からなかった。