第23章 追憶の果て
グラスの残りも僅かになってきた。
これを飲み終わってしまったら、後は寝るだけなのだけど
終わって欲しくなかった。
一刻も早く戻らなければいけないのは分かっている。
だけど、こんなに人目も気にせず自由に過ごせて、何にも追われず好きな事を出来る今日が終わってしまう事が寂しくて仕方が無かった。
向こうに戻っても二人で居られる事は同じだ。
分かっているけど、初めて味わったこの感覚が色褪せて欲しく無いのだと。
こんなにも子供じみた事が思い浮かべている事を知られたらきっと笑われるだろうな
グラスを持つ手にひんやりとした赤井さんの手が触れた。
顔を上げると、優しく微笑んでくれる赤井さんが居て。
「みなみ、不安なのか?」
『ん...少し...』
「みなみ、正直言うとそれは俺も少し同意だ」
『えっ?』
「もしも俺一人だけだったなら、恐らく今も混乱している事だろう」
『赤井さん...』
「だがみなみが居たからそうはならなかった。それはお前も同じだろう?」
コクりと頷く。
「俺達はお互いに助け合っているんだ」
『はい。でも、巻き込んでしまった...』
「そうか?みなみ、全ての出来事には意味があるんだ。こんな事はその辺を生きている人間も、どんなに力を持っている奴でも体験出来る事では無い」
「つまり、確実に何か大きな意味があったんだ。それが何かはみなみが一番分かっているだろ?そのお陰で得られた事も多い筈だ」
『確かに...私また暗い方に考えてました。この経験もまた変わった強みになりますよね。はい、沢山得られました、もう、本当に...』
赤井さんの言葉に心が軽くなって言葉が詰まりそうになる。
体温が移って温かくなった赤井さんの手が頭に伸びてきて
わしゃわしゃと頭を撫でられた
新しく口に入ってきたギムレットが今度は少し塩っぱかった。