第23章 追憶の果て
タクシーから見える今の景色も全て今日で最後なのかと考えると
あんなに嫌だったこの世界の日常ですらも、別れ惜しさが出てくる。
窓に頭を傾けながら外を見ていると温かい手が重なった。
・
充実した一日か。
この言葉に嘘偽り等は存在しない。
向こうにいたら、姿を偽らずにこんな事を出来る日は恐らく程遠い。
みなみのあんなに無邪気に燥ぐ姿を見るのは何時ぶりだろうか
そのくらい向こうの生活では余裕が無かった。
最初は戸惑ったこの世界も今では迷い込んで正解だった気がしてきたな。
お陰で脳内にあった厄介な物も消えてくれるみたいだ。
今までの事は全て此処に置いていこう。
みなみも全てが以前と比べて軽やかになったのは事実だ。
こいつも自分なりにケリを付けたのだろう。
だが、何故そんな哀しげに外を見るんだ?
お前の心には今何が映っていると言うんだ。
自分の生まれ育った場所に戻れなくなる事については、大抵の人間なら辛くもあるだろう。
ましてやみなみの場合は話も違うしな。
本当にそれだけなのか?
みなみの意志を尊重したい所だが
嫌だと言っても悪いが無理やりでも連れて帰りたいぐらいだ。
もう誰も失いたくは無い。
だが俺に出来る事はみなみを信じる事だけだ。
・
手を重ね合わせ、この世界での今までの事を思い出しては消化を繰り返す。
これが一昔前の自分なら、いや、赤井さんと出会う前なら
きっと変な意思が揺らいで嘆いていたかもしれない。
だけど気持ちは変わらない。
今度こそは自分自身の人生も良くしていきたい
新しい人生を歩んでいくと決めたのだから