第20章 本音
「僕は今凄い幸せだよ、みなみさんも同じなら嬉しいな」
自分と同じ事を思っていた零の顔を、視線を少し上げて見れば
また少し寂しそうな目をしていた。
『同じだよ。どうして、寂しそうなの?』
「...みなみさんには直ぐに見抜かれてしまうな」
なんて事を言いながら少し笑う零には、私なんかでは想像もできないぐらいの事を抱えているのだろう。
だけど知りたくて。
『零、何があったの?』
『いや、その...話したくなかったら、全然...』
こんな唐突に聞いてしまった事を直ぐに後悔して訂正したけど
口の端を少しあげる零はとても優しい目をしていて、それでいてどこか儚くもあって。
「みなみさんには、忘れられない人は居るか?」
『忘れられない人...』
「そう、僕には居たんだ」
『“居た”?』
過去形になってるという事は、つまりそういう事なんだろう。
体制を元に戻して零の手の上にそっと手を重ねた。
「僕には家族が居なかった。だけどある時、ヒロっていう親友に出会えてさ」
『ヒロ...』
ヒロって この間零が赤井さんに言っていた人の事だ...
「ヒロも僕と似た境遇だったんだ。共に警察を目指して同期になってさ、そこでまた三人の親友にも出会えた」
『素敵だね』
この状況から察するに、結末は予想がつくのに気の利く返しが出来ない自分にがっかりもする。
「無事に卒業出来て、五人揃って警察になれたんだ」
「...だったんだけど、もう僕以外は生きていなくてさ」
想像はついていたけど、実際にこうして聞くと辛すぎる。
『零.....それは...辛いね』
もう片方の手を零の背中に添えて、そっと摩る事しか出来なくて。
「僕とヒロは組織に潜入してたんだ。...赤井と三人でよく組まされたもんだよ」
『そう...だったの?』
「まあ、相変わらず気に入らない奴だったよ」