第3章 拾い物 (中原中也)
1人執務室の机の上で、拾った懐中時計を眺める
「どこかに名前でも書いていればな…ってやっぱり高けぇよなこれ、、青い宝石が施されてるな……タンザナイトじゃねえかよ」
時計の音だけが広く静かな部屋で小さく響いている
コンコン
誰かが扉をノックした
「私じゃ、中也」
「姐さんか、どうぞ」
「この部屋に来るのは久しいのう…、先程の報告書の件なのじゃが…」
ーーー
「…じゃあそれで良いのう、あと中也や、ちょいと気になっておったのじゃが、あの時計はどうしたのかえ?」
「あー、…これは拾い物でして…」
「ほう、何故拾った?」
「先程すれ違った女とぶつかって、その拍子に落としたらしく…こんな高そうなもんなくしたら痛ぇだろうなと…つい」
「成程、では持ち主に返さなくてはならんのう」
「そうですよね…返せるといいんですが、」
時計は持ち主を待っているかの如く、絶えず時を刻んでいる
ーーー
『ごめんねーーー、』
「月宮、遅い」
『ほんとごめん…でもまだそんなに経っていないんじゃ…?ほら、、ってあれ?』
「??どうかした…?」
『私の時計が…無いーー』
「時計?」
『そう、イギリスかどっかの変な市場で買わされたやつー…高かったんだよ??』
「あ、思い出した…懐中時計?」
『うんうん…』
「買わされたのに大事に使ってるんだ…」
『小さいから何かと便利でさ…物って愛着が湧くものだよね、失ってから初めて気づくんだ…』
「無いものは仕方ない、今日の任務をこなさないと」
『そうだよね…』
ーーー
結局時計は見つからなかった
結構気に入ってたんだけどなー
高かったけど…
誰かが拾ってくれていたら…
あ、でも持ち主なんて分からないよね
名前書いとけばよかった…