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✽深海傷女✽/イケメン戦国

第1章 ひとたび風が吹けば


「そう言って貰えて嬉しいです!今更なんですけど、お名前は?」
「七瀬といいます。これからよろしくお願いします」

どこぞの姫かと思うほどに丁寧に頭を下げると、黒みがかった白髪がさらりと滑り落ちる。白の中に一際目立つ澄んだ赤い瞳は、まぶたの奥へ閉ざされて、より高貴なオーラを放った。

「こちらこそ。この後は光秀さんとお話があるんですよね。部屋に戻りましょうか」
「はい。お願いします」

薄く水が張られた木桶がそっともちあげられ、静かな御殿の廊下をそっと進む。そこで舞は違和感に気づいた。

「そういえば全然桶重くないですね。魚の鱗って軽いんですね」
「私は人間の重さがどれくらいなのかわからないんですけど、人魚って軽いみたいですよ」
「へぇ、そうなんですね。人と作りが違うのかな」

傍から見ればおかしな会話をしながら廊下を進み、ようやく光秀の部屋の前へたどりつく。舞が襖に手をかけ、そっと開こうとした時。がさりと草むらが音を立て、刀をもった人影が飛び出し────

「きゃあっ…!」
「きゃっ!」

ぎらりと光るそれに2人は悲鳴をあげ、己の身を守ろうと蹲り、直前で獲物を逃した刀は背後の襖へぶすりと深く突き刺さった。はたと顔をあげれば、飛び出してきたその人が冷めた瞳でこちらを見下ろしている。

「舞さん、逃げて!」
「はい…っ」

振り回される凶器が襖へ刺さったことで、逃げる隙ができた舞は急いで立ち上がり、廊下の先へ駆け出した。うしろから追いかけてくる音を聴きながら、必死に走る。必死で走っているうちに御殿の深くへと入ってしまったのか、薄暗い廊下が続いている。そんな中、一筋の光が舞い込んできた。

「舞さん、奥の扉!」
「わかりまし…きゃっ!」

あと一歩のところで舞は着物の裾を踏んで転んでしまい、七瀬は宙へと投げ出された。しばらく宙を漂い、体を酷く打ち付け、舞も自分も、あの刀で。そう覚悟した七瀬は目を瞑り、その瞬間を待った。

「っ…?」

待てども待てどもその瞬間はやってこない。ふと目を開けば、白く美しい銀髪が目に入った。

「光秀、さん…」
「遅くなってすまないな、七瀬。御館様への御報告が長引いた。舞もよく持ち堪えた」
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