第5章 流星群が誘う旅
今朝も父、槇寿郎に声を掛けたけれど、槇寿郎は朝の食卓には現れなかった。
「父上は今朝も部屋にいるのか? 」
「はい。起きてはいるようでしたが、返事がなくて」
「そうか…」
槇寿郎が朝食を満足に取らなくなったのはいつからだろう。杏寿郎が鬼殺隊に入った頃くらいだろうか。それ以前は、忙しい柱の任務をこなしながらも、朝から家族で膳を囲んでいたのに…。
父は杏寿郎が鬼殺隊に入る事を快く思っていなかったのだろうか。薄々、そう感じてはいたが、最近特に父は部屋に籠る事が多くなった。
茶の間には、朝の光が差し込んでいて、今日も一日晴れそうだ。槇寿郎を心配する兄弟を優しく照らすように、太陽の光が食卓にまで届いている。明るさは元気をくれる。二人だけの食事の時も寂しくはない。
「今日は晴れていますね。兄上は何をなさいますか? 」
「俺は、剣道の練習をしようと思う。誰か尋ねて来れば一緒にやるがな! 」
「はは!隊士の誰かが来そうですね!お天気が良いから」
そんな話をしながら朝食を終え、千寿郎が部屋で勉強を始めた頃。
「こんにちはー!煉獄さぁぁん」
玄関先から明るい女の子の声がした。
「あっ、甘露寺さんだ! 」
千寿郎は鉛筆を置くと、机から立ち上がって玄関へと急いで行った。
「こんにちは!千寿郎君、久しぶりだね!元気だった⁉︎ 」
「はい!元気です!兄上はいますよ。剣道の相手が尋ねて来ないかって、話してたんです。蜜璃さんが来たから喜びます! 」
千寿郎も久しぶりに会えた蜜璃が元気そうで嬉しかった。
「きゃっ!ほんとに⁉︎ 丁度良かったわ!師範にお相手して貰うのも久しぶりだもの!それとね、今日は千寿郎君にお菓子の作り方を書いてきたの」
蜜璃は可愛らしい便箋に手書きで書かれた物を見せる。
「これね、すぃーとぽてと、っていうの。とっても美味しい西洋菓子だから、作ってみてね!師範の好きなお芋で作るんだよ! 」
「わあ!では俺は、今から作ってみますね! 」
千寿郎が材料を確認しながら言うと、蜜璃はニコニコっとした。
「うん!千寿郎君、頑張ってね!千寿郎君ならできる! 」
蜜璃は廊下を歩いて行った。
「おお!甘露寺か!!良い所に来てくれたな!! 」
向こうから、兄の喜んだ大きな声が聞こえてきて、千寿郎はくすくす笑った。