第5章 流星群が誘う旅
大河内孝蔵との食事が終わると、孝蔵は別の部屋へと行った。孝蔵の隣にいた花魁と一緒に消えた所をみると、今夜は孝蔵もここで過ごすようだ。
部屋に残されたのは杏寿郎と、先程の花魁の浮舟の二人である。食事が済む頃、食卓を飾っていた料理は全て片付けられ、新しい酒が運ばれた。
キリッと冷えた日本酒の徳利とお猪口が、この先の時間を二人で過ごすための寝間に変わった事を知らせる。
杏寿郎は胡座を組み、静かに座っている。
浮舟は徳利から酒を注ぎ、杏寿郎の前に置いた。
「主さん、こっからは遠慮はいりんせん」
しなやかで白くきめ細やかな手で盃を勧める。着物の袖から見える肌は艶めかしく、誘惑するようだった。
「俺は、遠慮しているように見えたか? 」
杏寿郎が浮舟の方を向いた。それまで、ほとんど浮舟を見る事のなかった杏寿郎と初めて目が合った。
「わちきの目には、そう見えたでござんした。だって、主さん、ほとんど飲まないんですもの」
杏寿郎の方へと身を乗り出し、そっと寄り添った。
「ここへ来るのは初めてなんざんすか? 」
杏寿郎の胸に手を添えて、顔を見上げる。間近で見る杏寿郎の顔は凛々しく、唇はキリッと口角が上がり清潔で、とても整った顔立ちをしている。
「女に触れるのも、初めて? 」
杏寿郎の隊服の胸を撫でる。服の上からでも分かる程に鍛えあげられた身体。きっと背中の方も隆々としていて、肌を合わせると、きっと力強くて…。
まだ若い花魁の浮舟は、少し目を潤ませる。鼓動が速くなる。自分から擦り寄りたくなる男は存外少ない。
「俺は仕事柄、酔い潰れる訳にはいかないんだ。君もだろう」
自分にぴたりと寄り添って、隊服のボタンを外した浮舟の耳元で囁いた。
「わちきは酔ってしまいそうで…ふふ…ねぇ、主さん。これは恋文にありんすか? 」
杏寿郎の胸の内ポケットから、薄桃色の小さな封筒を取り出した浮舟は、指先で封筒を弄ぶようにする。