第5章 流星群が誘う旅
「いやな。今日、君を誘ったのは男同士で話したかったからだ。杏寿郎君、君がうちの美也子と親しいのは知っとるが、美也子は気は強いがうぶな子だ。何も知らん。杏寿郎君が美也子と結婚する時にだな、お互い何も知らんじゃ美也子も可哀想だと言うもんだ。杏寿郎君も男なら、そういった遊びの一つも身につけて、美也子を幸せにしてくれればと思ってな」
孝蔵は美也子の名を出す時、父親の目になった。
「結婚した後で美也子を捨てるような事はあってはならん。程よい遊びを、わしが今のうちに教えておこうと思ってな。美也子一人で我慢しろとは言わん。あんた程の男なら女には事欠かんだろう。ただ、離婚は避けてもらいたいからな」
大河内孝蔵、杏寿郎の幼馴染の美也子の父である。杏寿郎が藤襲山に最終選別へと赴く時、泣きながら走って来た女の子が美也子である。
「分かってもらえんか。わしもそうやって来た。妓楼で憂さを晴らしたら、家庭では善き夫をしてくれれば良いんだ。杏寿郎、若いし遊べ。なあ」
孝蔵は隣にいる花魁の手を握った。
「ふ…ほんざんす。ここは現世を忘れる場所でありんす」
華やかな花魁が柔らかな甘い声で囁いた。
「杏寿郎、部屋は取ってあるからな。浮舟と明日の朝まで遊んで帰れ」
杏寿郎の隣にいる花魁が花びらのような唇で微笑んだ。杏寿郎に少し寄り添うように座っている美しい女である。
浮舟は空になっている杏寿郎の盃に酒を満たした。
杏寿郎は長い指で小さな盃を摘むと、ぐっと飲み干した。