第5章 流星群が誘う旅
「ただいま帰りました」
杏寿郎が家に帰ると、煉獄家の住人の物とは違う紳士靴がある。
「あっ、兄上お帰りなさい。今大河内さんがみえてます」
玄関に急いでやって来た千寿郎が杏寿郎に囁いた。
「そうか…。早めに帰っては来たんだが…着替える時間はなさそうだな。千寿郎、悪いが行ってくる」
「いってらっしゃいませ。お帰りは遅くなりそうですか? 」
「よく分からんが、話があるらしいんだ。そんなに遅くはならないだろう」
なるべく早く戻るつもりで言うと、千寿郎はホッとした顔になった。
「悪かったね、忙しい所を連れ出したな」
大河内孝蔵は、自分の向かいに座った杏寿郎に酒を勧めた。
「いえ。今日は何のお話でしょうか」
杏寿郎は盃に酌をしてくれる花魁の白い手にチラリと視線をやった。
「まぁまぁ。杏寿郎君、飲みたまえ。今日も任務だったそうじゃないか。疲れたろう、癒しに一杯、飲みなさい」
杏寿郎は注がれた酒を飲み干した。更にもう一杯、注ごうとしたした花魁の手を止めて、二杯目を流し込んでいる大河内孝蔵を見る。
杏寿郎の視線を受けて、孝蔵はふと笑う。
「良い生地だな。開発に時間がかかったが、伸縮性も強度も申し分ない」
杏寿郎は自分の着ている隊服の腕を曲げて頷いた。
「確かに良いです。前回より強度が増したように感じる。着て実感しています…おじさん、それが俺にここで確認したい事ですか? 」
派手な牡丹が描かれている襖絵は、料亭ではなく妓楼にある御座敷の物だ。特徴的な官能美に目が眩みそうになる独特の色彩。
「杏寿郎君に着た感想を聞きたいに決まっとる。わしの会社で作らせて貰ったものだしな、気を悪くせんでくれよ」
大河内孝蔵は持ち前の堂々とした大物らしい態度で笑った。
周りにいる花魁や遊女もクスと笑う。