• 小
  • 中
  • 大
  • テキストサイズ

『鬼滅の刃』桃寿情炎シリアル

第1章 吉兆を告げる白梅


「あ、あにうえ」

 父の帰りを待ち、まだ幼い弟と二人、居間で過ごしていた杏寿郎は、熱心に読んでいた書物から顔を上げた。

「ん?どうした、千寿郎」

 目の前にちょこん、と座って玩具で遊んでいる弟は、遊びの手を止めて兄を見つめていた。

「お腹が減ったか?千寿郎、蜜柑を剥いてあげる」

「みかんは、いらないでしゅ」

 まだ可愛らしい言葉使いになる小さな弟の頭を撫でて、杏寿郎は微笑んだ。

 窓の外はすっかり暮れている。

「そうか!ではどうした? 」

 千寿郎は、覚えたての言葉で、一生懸命に兄に伝えようとする。

「お、おちちうえは、おかえりになりますか。せんは…おちちうえに、あいたいです」

 まだ三つの千寿郎なりに、父を心配しているのだろう。杏寿郎も幼い時からそうだったので、千寿郎の気持ちがよく分かった。

「千、おいで。父上がお帰りになるまで抱っこしてあげよう」

 千寿郎は杏寿郎のおひざに、ちょこん、と座る。

 小さな弟の身体を抱きしめて、杏寿郎は可愛らしい千寿郎の頬に自分の頬をすり寄せた。

「お父上は立派にお役目を果たして帰って来てくださるよ。今日あった事をお話しになるかもしれないから、楽しみに待っていようね」

「はい!あにうえ」

「お腹が空いたなぁ」

 杏寿郎は千寿郎の柔らかな手を触りながら呟いた。ぷっくりとした小さなおまんじゅうのような千寿郎の手。杏寿郎の手もまだ小さいが、杏寿郎のは日々の鍛錬で手の皮が厚くなりかけている。

 今日も、父の居ない間竹刀を振った。千寿郎も兄の真似をしていた。

 もうそろそろ夕食の時間だ。

 お台所から夕食の良い香りが漂っている。お味噌汁のお出汁の匂い。今日のおかずの、ふろふき大根に添える柚子味噌の良い香りも感じられる。鰤の照り焼きも楽しみだった。

 手伝いをしに来てくれる人が、夕飯を用意してくれている。三人で食事をしながら、今日の話を聞くことができるかもしれない。


 

 
/ 405ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp