• 小
  • 中
  • 大
  • テキストサイズ

『鬼滅の刃』桃寿情炎シリアル

第1章 吉兆を告げる白梅


「雨が止みましたね」

 振袖の帯を福来雀に結びながら、あまねの母は嬉しそうに言った。

「はい。少し安心致しました」

 神籬あまねは、この数日の間、今日が晴れになるよう願っていた。

 雨で着物が汚れてしまっては訪問先の産屋敷家に失礼になる。産屋敷様も雨の中、客人をお迎えするのは難儀な事だろうと、それが気がかりだった。

「産屋敷様からの、お迎えの方がいらっしゃるまで、お父様の所で待ちましょうか」

「はい、お母様」

 訪問着に着替えたあまねと母は、父の待つ拝殿へと移動した。

 さっきまで降っていた雨は、神社の屋根や境内をしっとりと濡らして、境内にある木々から雫がぽたり、ぽたりと光りながら滴る。

 拝殿から外を眺めているあまねの前に、父は御神酒をそっと置いた。

「あまね、行く前に御神酒をいただいて行きなさい」

 あまねに盃を持たせると、神主であるあまねの父は、御神酒を注いだ。

 ふわりと清酒の香りが漂う。

 あまねは一礼すると盃の中身を流し込んだ。清められた御神酒が身体を巡り、父は大切な日にはいつも、こうして送り出してくれていた事をありがたく感じた。

 盃をそっと盆に返して、あまねは一礼した。

「あまね、見てごらん。白梅が咲いたよ。これは善いことの兆しではないだろうか。産屋敷様はまだお若いが、素晴らしい方だと聞く」

「はい。お父様」

 あまねは、今日のお見合い相手である産屋敷耀哉という人物について、知らされていない。

 呪われた産屋敷家。生まれる者が短命である不幸から救う道として、当主耀哉の結婚相手を神籬家の中から、という運びになった。神籬家は代々、神職の家系である。

 まだ年若い産屋敷耀哉を支えるに相応しいだろうと、二人の縁談は極秘の内に進められた。

「あまね、今日まで不安な思いで過ごした事だろう」

 父親には、大きな運命の扉の前にいる娘の、口には出さない不安が見えた。

「お父様…。少々不安はございます。でも、早くお会いしたいと思います」

 あまねは心の中で繰り返し思う。産屋敷耀哉様は、私が心からお慕いするべき人ですか?共に命を繋いでいける御方でしょうか。

 

 

 


 
/ 405ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp