第4章 白梅と月夜の友人
ひなたと母は同時に叫んだ。
「わああっ!!愈史郎っっ!!」
「照子おば様、やめてください!その方は生徒さんですっ」
どう見ても10代の愈史郎は、お母さんには生徒に見えたようだ。
お母さんは愈史郎を庇うように叔母さんの前に立ちはだかる。母なりに生徒を守るつもりのようだ。見ていたひなたは目が見開いた。
「帰りそこなってしまったのね、タクシーを呼ぶから、あっちに行きましょう!ね! 」
お母さんは愈史郎の肩を抱いて部屋から出ようとした。
「ちょっと、待ちなさいよ!逃がさないわよ!! 」
照子叔母さんは愈史郎の腕を掴み、行かせまいとする。
「あっ、照子おば様、やめて下さい。大切な生徒さんです、暴力はだめよ! 」
叔母さんとお母さんが愈史郎の取り合いをする中、当の愈史郎の目はキラリと光りながらひなたを捉えた。
「ひなた、逃げるぞ! 」
白梅の盆栽の鉢を抱いた愈史郎がひなたに合図する。
「うっうん!! 」
「ひなた、ついて来い! 」
愈史郎は二人のおばさんの袖をかいくぐり、素早く身をかわして部屋を飛び出す。
その後をひなたも追った。屋敷の長い廊下を、漫画のようなスピードで小股で駆け抜ける愈史郎の背中を見ながら走る。
「ちょっとぉ!!待ちなさいよおおおっ!! 」
ヒステリックに叫んだ照子叔母さんが追いかけて来る。愈史郎は振り向いて叔母さんの姿を目に映すと、足を止めて白梅をひなたに押し付けた。
「アイツはここで止めるから、ひなたはそれを持って隠れてろ! 」
「どこに隠れるの⁉︎ 」
怒りの表情で走って来る叔母さんの顔が怖すぎて、ひなたは震えて愈史郎に尋ねた。
「おじいちゃんの家だろう、隠れる場所くらい知らんのか! 」
ギラギラの目で叱られて『行けっ』と言われたひなたは脱いでいた靴を急いで履いて玄関の外に出た。
振り向くと、照子叔母さんを羽交締めにした愈史郎が見えた。