第4章 白梅と月夜の友人
部屋の前に立っていたひなたに気がついて、一瞬驚いた顔をした叔母さんは、作り笑顔でひなたを見上げた。
「あっらぁ!ひなたちゃん、久しぶりね!憲伸からのメールは読んでくれてる?ひなたちゃんと二人でお食事したいって言ってるの。たまには会ってあげてね。ね、白梅の盆栽はどこにあるか知ってる?輝利哉おじさまの部屋にないのよ」
息をつく暇もない程のスピードで叔母さんは喋る。
「見たことがないから知らないの」
ひなたがさらっと言うと、照子叔母さんは頷いた。
「そうよね、あれは大切な物だからね。跡継ぎしか触れないもの。ひなたちゃんには縁がないわね」
叔母さんはひなたの脇を通り過ぎて、次々と部屋の襖を開けては中を確認し始めた。
部屋から出てきたひなたの母が、ひなたの姿を見ると泣き顔で駆け寄る。
「ひなたちゃん!照子叔母さまが、おじいちゃまの白梅を持って行くって言うの。おじいちゃまの大切な物なのに、ひなたちゃん、一緒に止めて! 」
ひなたの腕にすがるようにして泣く。
「お母さん!白梅はどこにあるの? 」
お母さんは首を振った。
「さっきまで、おじいちゃまの部屋にあったのに消えたの。だから照子叔母さまが探してるのよ…どうしたら…」
お母さんはおろおろしていた。
奥の座敷を開けた照子叔母さんが金切り声をだして叫んだ。
「ちょっと!!アンタそこで何してんのよっ!!!」
ひなたとお母さんは顔を見合わせた。
家の中には、ひなたの家族以外、誰もいない筈だったからだ。
お父さんはまだ帰っていないようだし、おじいちゃんと母とひなたと照子叔母さんだけだと思っていた。
「なんでアンタが白梅を持ってんのよっ!!渡しなさい、早く!!!! 」
照子叔母さんの声がする。白梅を奪い合うような声がしていた。
「こら泥棒!!アンタが触っていい代物じゃないのよっ!! 」
慌てて駆け寄って座敷を覗いたひなたとお母さんの目に飛び込んできたのは、盆栽を奪い取ろうとしている照子叔母さんと、叔母さんの猛攻から白梅を守って抱きしめている愈史郎との、とんでもない光景だった。