第4章 白梅と月夜の友人
「ただいまー! 」
帰りが7時を過ぎていたから、学校は終わっている。屋敷にはもう誰もいないだろうと思っていたひなたは、玄関に無造作に脱ぎ捨てられたマノロブラニクのパンプスを見つけた。
「お客様かな? 」
なんだかいつもより家の中が騒々しい気がした。居間の方から人が揉めるような声が聞こえてくる。ひなたは靴を急いで脱ぐと、家の中に駆け上がる。
「だから言ってるでしょう?輝利哉おじさまに、もしもよ?万が一の事があった時、どうするのかって言ってるのよ。今のうちに決めておいた方が賢明よ。産屋敷家の跡取りにふさわしいのは、うちの憲伸しかいないでしょ。憲伸は、学歴も経歴も最高だし、医師で趣味はライフルにヨットで申し分ない息子なのよ」
照子叔母さんだ。おじいちゃんの様子を見にきたのかな…。
叔母さんの強い口調に対して、お母さんの柔らかい声がした。
「憲伸君は、確かに素敵ね…。でも、まだ、おじいちゃまの跡取りとか、そんなお話は…どうかと思うんです」
「甘いわよ繭子さんは」
叔母さんはイライラした口調で言った。
「輝利哉おじさまが亡くなってから慌てても遅いの。おじさまの事だから、まだ跡取りを決めてないんじゃない?国凛哉はのほほんとしてて、おじさまの財団の管理で手一杯じゃないの。とても跡取りの器じゃないでしょ」
「そんな!国凛哉さんは立派な人です!国凛哉さんは真面目な人だから、財団の大変なお仕事をおじいちゃまに任されているんです」
「ああ!繭子さんと話しても無駄無駄、時間の無駄だわ。とにかく、次の跡取りはうちの息子しかいないの!分かった⁈ 白梅の盆栽を早く出しなさいっ」
「いやです!それは、おじいちゃまが決める事です」
いつもはおっとりした母の、怒った声がして、ひなたはたまらず部屋に入ろうとした。
その時、襖が開いて照子叔母さんが出てきた。