第4章 白梅と月夜の友人
翌日、ひなたは仕事が入ったので朝から出掛けた。ひなたにはマネージャーがいる。仕事の送り迎えなどもしてもらえるのだが、今までひなたは、自分でできる事はなるべく自分でしてきた。
そのマネージャーから連絡が来て、急だけれどもメイクの特集ページのビューティーモデルをして欲しいと言われたのだ。
ひなたは始め、気が進まなかった。契約期間内ではあるけれど、ひなたの心は傷ついている。でも、プロとしての責任感が仕事を放棄するなと言う。
「メイクアップアーティストの甘露寺先生が、どうしてもひなたさんでやりたいって言われたんです。ひなたさんの肌と顔が大好きだからって」
迎えに来てくれると言うので、仕事の依頼を受ける事にした。これまでも、急に仕事が飛び込んでくる事はよくあり、ひなたはずっと多忙なモデルだったのだ。
「ひなたさんのお祖父さんの家、なんか時代劇に出てくる殿様の家みたいですねぇ」
迎えに来てくれたマネージャーはとっても驚いていた。
なんだか、もうモデルのお仕事は来ない気がしていたから、ドキドキした。今日一緒にお仕事をする甘露寺蜜璃は、今とっても人気のあるメイクアップアーティストだ。
マネージャーはスタジオへ向かう車の中で、申し訳なさそうに謝った。
「ひなたさん、この前はすみませんでした。撮影場所まで迎えに行ったら、ひなたさんはもう帰られた後で…」
「あの後、一人で帰ったんですか? 」
ひなたの方をチラリと見て、また前を向いた。
「社長も酷いですよね、ひなたさんを1番、可愛がってたのに契約を切るなんて。僕も驚いて反対したんですけど、社長は聞く耳もたないから」
「いいんです」
「ひなたさん、別の事務所を紹介しましょうか」
それはひなたも考えなかった訳ではない。だけど、それは違う気もした。社長が言いたかったのは? ひなたをただ切りたいからクビにした、それだけが理由ではない気がしたからだ。
社長の言った言葉を、深く考えてみる必要はありそうだ。事務所を変わって解決する問題ではなくて…多分。