第4章 白梅と月夜の友人
不死川さんは木に近づいて、幹の中に暗く開いた穴に渦巻いている流星群の光の中に手を入れた。
「あっ、不死川さん危ないよ! 」
ひなたが不死川さんに駆け寄ると、穴から手を出した不死川さんは腕や指先を眺めた。
「俺はなんともない。その愈史郎って奴の言葉通りなら、ひなた以外の人間には変化が起きないって事で間違いないんだな? 」
「愈史郎はそう言ってたの」
不死川さんは腕組みをした。不死川さんの腕時計のベルトがキラリと光る。ヴィンテージの時計らしい上品な雰囲気が不死川さんによく似合う。
「ここには生徒やアオイさんもいるからな。危険なら近づけられない。どうしようか…」
「不死川先生ーーっ!ひなたちゃーん! 」
庭で生き物観察をしていた子供達がこちらに走って来た。
「先生、何してるの? 」
子供達は不死川さんの周りに集まっている。不死川さんが白梅の近くに立っていたから、何事かと興味津々で来たのだ。折れた幹を覗きこもうとした子を、不死川さんは慌てて木から離した。
「折れた木の近くに寄るな。危ないから」
不死川さんは子供を胸の中に庇ってぎゅっと抱きしめた。背の高い不死川さんのお腹の辺りに顔を押し付けられた男の子はジタバタして言った。
「先生、木が折れて断面が見えてるだけだから、平気だよ」
他の子もみんな、幹を覗いていたけれど、誰にも幹の流星群は見えていないようだった。
「みんな、何ともないか? 」
不死川さんに尋ねられた皆は、口々に『平気』と言った。
ひなたと不死川さんは目を合わせる。何故、二人には見えて皆には見えないのか、同時に思ったからだった。
「まだ授業中だろ。今は産屋敷の庭にいる生物を調べる時間じゃなかったか?胡蝶先生があっちで待ってるぞ、行って来い」
優しく不死川さんに背中を押された皆は、カナエ先生の方へ走って行った。
向こうでは蝶を観察しているカナエ先生と女子がいる。