第4章 白梅と月夜の友人
おじいちゃんの主治医が診察を終えて帰った後で、ひなたは庭の、石の橋の上に座って流れていく水を眺めていた。
一人、清らかな水の流れを見つめていると、自分にとって輝利哉がどれ程大切な存在か思い知らされる。
おじいちゃんはいつも、庭にいて生徒さん達と話をしていた。この場所に集まる人達を大切にして、皆が歩きだせる手助けをしていたな…。
控えめだけど、どこにいても目立つ人で、おじいちゃんの側にいると誰もが穏やかになれた。だから輝利哉の側にはいつだって誰かがいた。
「大丈夫か? 」
ふと、不死川さんの声がして振り向くと、ひなたの後ろに不死川さんが立っていた。
「うん…」
膝を抱えて座っていたひなたの隣に、不死川さんも座った。長い脚で胡座を組み、ひなたと同じように清流に目をやる。
「主治医の話では、先生、だいぶ弱ってるって言ってたな…」
「うん…」
グスッ。ひなたはまた泣いてしまった。
「先生、あの白梅から元気をもらってたのかもしれないな」
ぽつり。不死川さんが呟いた。
「白梅の木に? 」
ひなたが不死川さんを見ると、不死川さんはひなたの濡れた頬に触れて涙を指で拭った。
「あの白梅を先生は大事にしていた。知らないだろ、先生が1日に何度も白梅の木に話しかけてたこと」
「知らない…」
「それくらい、何度も見に行く程、大切だったって事だァ」
不死川さんはひなたを見て優しく笑った。
「いつか大切な孫に渡したいって言ってたな。それってひなたの事だろ? 」
おじいちゃんの想いを感じて、ひなたはもっと切なくなる。
「なんとかしないとな。先生が目を覚ました時に喜ぶようにな」
不死川さんが腕を伸ばして、ひなたの頭を自分の胸に寄せた。不死川さんの胸はとても広くて暖かくて、顔を埋める形になって初めての感覚がした。
不死川さんの着ている柔らかな素材のシャツが、自然にひなたを包んでいる。
「泣いて良いよ。悲しいよな、我慢するな」
温かい胸に額が触れると、なんだかホッとして身体も涙腺も緩んでいく…。
「ひなた…」
悲しくて、不死川さんの胸で暫く泣いてしまった。