第4章 白梅と月夜の友人
この前は帰らなかったから、今日はどうかなと思った。
「ね、おじいちゃん。お父さんとお母さんと皆でご飯食べよ! 」
孫の頼みには弱いのがおじいちゃんという生き物ではないだろうか。
「では、用意をするから、少し待っていて」
「うんうんっ!! 」
「父さん、学校も大切だけど、家でゆっくりと暮らさないかな」
迎えに来てくれた車の中で、運転しながらお父さんは言った。
「そうは言っても、この暮らしが私の幸せなんだがなぁ」
おじいちゃんはのんびりと言った。
「父さんがしっかりしているのは分かっているけど、100歳を超えてるんだよ。無理してほしくないし、繭子さんも待ってるから」
「ありがとう。もう暫く、こうしていたいんだ」
いつものやり取りではある。おじいちゃんを心配しているお父さんと、穏やかに今の暮らしを大切にしたいおじいちゃんとのやり取りは、ひなたが小さな頃から変わらなかった。
「くれぐれも、無理しないで下さいよ。父さん」
「分かっているよ。ひなたのために少しでも長く生きていたいな」
おじいちゃんは隣に座っているひなたに微笑みかけた。
「ひなたは、国凛哉、君もだけれど。君達が生きている今が、私の、私達の命を懸けた夢だったのだから」
四ツ谷の家に着いて、玄関を開けるとお母さんが迎えてくれる。
「お帰りなさい!おじいちゃま。あなた、ひなた。お腹空いたでしょう、すぐにご飯にしましょう」
「ありがとう、繭子さん。ただいま」
お母さんのご飯の匂い。ほっとする夕暮れの夜ご飯のにおい。おじいちゃんの好きな蟹のちらし寿司だなってひなたはすぐに分かった。
その夜は予報通りの嵐になった。夜ご飯を食べてから、夜が更けるにつれて、雨風がどんどん強くなってきている。
「酷くなってきたわ…おじいちゃまが来てくれて良かった」
お母さんが窓の外を見て安心したように言った。暴風吹き荒れる嵐と横殴りの雨の激しさが奇跡外れの台風のようだ。
「繭子さん、ここは落ち着くよ」
お母さんに優しく答えながらも、どこか心配そうなおじいちゃんの事が気になるひなただった。
もしかして、白梅の木の事を気にしているのかな…。