第4章 白梅と月夜の友人
神崎アオイさんのお手伝いをしていたから、おじいちゃんに呼ばれて来ていた事を忘れていた。
「先生がお待ちではないんですか? 」
「そうでした! 」
ほぼお料理が完成した頃、アオイさんに言われて思い出したひなたは、慌てておじいちゃんの部屋に向かう。
「お昼はお持ちしますから、ゆっくりお話ししてくださいね」
アオイさんにクスクスと笑われながらお台所を出る。
「すみません、また後で! 」
なんだかとても楽しかった。
お屋敷の中を早足で歩いて輝利哉の部屋の前に立つ。
「おじいちゃん、いる? 」
返事がなかったので、ひなたは襖を開けて部屋に入った。
「いないのかな、授業かもしれないな」
綺麗に片付けられている。屋敷のあちらこちらに、産屋敷家に伝わる調度品がさりげなく置いてあるけれど、この部屋にも平安時代に作られた焼き物などが、特に主張するわけでもなく静かな佇まいを見せている。
国宝になってもおかしくない程の物が、おじいちゃんの生活の中でひっそりと息づいている。連綿と繋がってきた産屋敷家の歴史。
おじいちゃんの屋敷に来ると、ひなたはいつも不思議な気持ちになるのだ。
おじいちゃんも、ごく自然に、この屋敷で生きている。
ふと見ると、座卓の上に白梅の盆栽が置いてある。
ひなたが両手で持てるくらいの大きさ。高さは40センチくらいだろうか。
「これかな、おじいちゃんが言ってた白梅は」
白梅に近づいて上から眺めていたら、後ろから声がした。
「そうだよ。ひなたを呼んだのはこれを見せたくてね」
振り向くと、おじいちゃんがいつの間にか部屋に入ってきていた。