第8章 ※ 誰を愛していたとしても…。
「君は柱を酷いと言ったが、鬼殺隊なら誰もが、鬼を連れている事に反対だ」
「でも、炭治郎君の妹だよ」
「鬼殺隊は千年、鬼の始祖、鬼舞辻無惨を追っているだろう?鬼に大切な人を奪われた者達の想いも受け継がれてきた。自分は出来なくても、きっとこの想いを受け取った誰かが成し遂げる。そうやって繋がってきたんだ。その想いがどれ程の物か柱なら皆分かる。竈門兄妹に対して非情とは思わない」
杏寿郎の言葉には柱としての責務が感じられた。そういう声音だった。
しかし、現代っこであるひなたには、竈門兄妹を処罰するなんて、とても酷い事だと思えた。
「とにかく、炭治郎君達を守ってね!煉獄さんは任務とかでも炭治郎君と一緒になるかもしれないもの。あの縞模様羽織の人からもね! 」
「伊黒か。嫌な人間ではないぞ。それに、竈門少年なら、胡蝶の家で面倒を見ることになったし、問題ないだろう」
ひなたは煉獄さんに詰め寄った。
「煉獄さんが、炭治郎君を、守ってね! 」
圧のある言い方だ。
「よかろう。君がそんなに言うならばな。竈門少年とその妹は、鬼殺隊の為になるのだな」
「そうだよ。良い子なの」
「お館様も、お認めになった事だ。とやかく言うまい」
さっぱりした性格の杏寿郎らしく、明朗な言葉だった。
「ありがとう!煉獄さん、好き! 」
軽く言ってしまって、ハッとなる。今のは友達にも言う感じの好き、なのだけれど、杏寿郎をチラ見すると、立ち止まっている。
「ひなた」
「はい…」
「今度、鍛錬のない日、お互いに何も用件のない休日に、出掛けないか」
杏寿郎は少し緊張しながら言った。
「煉獄さんが、鍛錬を休みにしてくれるなら…」
ひなたもドキドキしている。煉獄さんから誘われたのは初めてだ。
「休みを作らねば、な」
それから、杏寿郎はまた歩き出す。いつもの道、商店が軒を連ねる通りには燦々とした夏の太陽の光が届いていた。
「千寿郎に何か買って帰るか! 」
洋菓子を売るお店の前を通った時、杏寿郎が立ち止まりひなたを見た。
「うん!帰ってから千寿郎君と食べる!買って」
ひなたは嬉しくて杏寿郎の腕に飛び付いた。