第8章 ※ 誰を愛していたとしても…。
産屋敷からの帰り道、杏寿郎と並んで歩きながら、ひなたは炭治郎君兄妹を守る事ができて良かったと思っていた。
「柱って怖い人の方が多いね」
「何故、そう思う? 」
「だって、炭治郎君たちの事、処罰しようとしたり、特にあの縞々の羽織りの人すごく冷たいし、不死川さんにしても…」
堀のある通りを歩くと、水草が沢山生えていて、あまり動きのない水の中ってどうなっているのかなと思う。
「お魚いるかな」
水草に花が咲いているものもあって、かわいい紫色の花に目が行く。夏の午後、大正の街は、店の前で休憩する人、冷えた瓶から美味しそうに飲み物を飲む人もいる。ひなたから見るとレトロな看板やお店も多くて、さっきまでの喧騒が幻のようだった。
「魚はいるぞ。エビもな」
「エビ⁈ 見たい! 」
驚いているひなたの反応が面白いのか、杏寿郎はキリリとしたその顔に微笑を浮かべた。何度も通っている道だが、今日はなんだか新鮮だ。
「不死川には、継子になった話をしていなかったのか? 」
「なんで不死川さんに言うの? 」
川面に近付き見ようとしていたひなたの背中に問いかけたが、ひなたの返事は杏寿郎の思っていたものとは違っていた。
「君は、不死川の恋人だろう」
ひなたは白い髪を揺らして答えた。
「不死川さんじゃないの。私の彼」
杏寿郎はひなたに一歩近づいた。
「では、誰だ?宇髄か」
「宇髄さんでもないの」
ひなたは、どう言えば煉獄さんにきちんと伝えられるだろうと思った。
不死川さんのひ孫と付き合っている事、そして、不死川さんの事を大好きだけど煉獄さんの事も大好きになってしまっていることを。
「私、煉獄さんの事、好きだから」
「それじゃ分からん!! 」
「今はわからなくていいよ。とにかく、不死川さんとは何でもないの」
納得できない答えではあったが、杏寿郎はそれ以上の追求はやめた。自分にも美也子という、花嫁候補がいる。
きっとひなたも、産屋敷の人間なので親の決めた婚約者がいても不思議ではないと思った。
また並んで歩きながら、杏寿郎は口を開く。