第8章 ※ 誰を愛していたとしても…。
「知ってる…かな」
ひなたの知っている炭治郎君と同一人物に見える、けど時代が違うのだ。
頼りない答えしかできないけど、とにかく止めなければ。
ひなたは杏寿郎に縋り付いて言った。
「炭治郎君は悪い子なんかじゃないの!あんな風に拘束なんてしないで!! 」
そして、不死川にも必死で訴える。
「不死川さん、お願い!こんな事はやめてください! 」
「ちっ、近づくんじゃねェ!! 」
不死川はひなたを引き剥がす。ひなたが近い。あまね様と同じ顔で訴えてくるから赤面しそうになる。
前に会った時からひなたを可愛いと思っていた。不死川は照れ屋である。
「ちょ、っと落ち着けってェ…」
ひなたに気を取られそうになったが、竈門炭治郎が自分に向かって走り出そうとしている事に気がつき、不敵に笑った。
「俺の妹を傷つける奴は!柱だろうが、何だろうが許さない!! 」
叫びながら走ってくる炭治郎にイかれた顔で笑う不死川。
「ハハハハ‼︎ そうかい、よかったなァ」
その時、静かに、その様子を見守っていた冨岡が叫んだ。
「やめろ!もうすぐお館様がいらっしゃるぞ!!」
その声にぴくりと素に戻りかけた不死川、その一瞬の隙をついた炭治郎が不死川を頭突くために高く飛び空を舞う!!
あっという間の出来事だった。ひなたはぎゅっと目をつぶる事しかできなかった。
…ああ!炭治郎君か不死川さんが大怪我をして倒れる!
誰もが瞬間、そう思った。
バッシシィイイイイツツッ!!
物凄い音がして、目を開けてみると、不死川に突っ込んでいた炭治郎君の身体は、ギリギリの所で杏寿郎の胸に受け止められていた。
「…両腕を拘束されているのに、無茶をするな」
杏寿郎の落ち着いた声がした。
「君が、溝口君か」
胸に受け止めた炭治郎君を立たせつつ、杏寿郎が囁いた。
「竈門です。大丈夫ですか?俺…あなたに頭突きをしてしまいました」
…当たりどころが悪かったから、この人は名前を…。
炭治郎は心配になっていた。母譲りの石頭が炸裂してしまった。
…この人は胸で俺の頭を受け止めてくれたんだ。
「煉獄さん、大丈夫⁈ 」
すごい音がした。ひなたは杏寿郎が心配になった。