第1章 吉兆を告げる白梅
杏寿郎は尊敬の眼差しで父の顔を見上げる。
「父上、今日は産屋敷のお館様の、大切な日というのは本当ですか?父上が警護という大役をお引き受けになったと聞きました!父上も、今日を待ち望んでおられたのですか⁉︎ 」
杏寿郎少年の目は期待で大きく開いていた。
鬼殺隊を率いている産屋敷耀哉にとって、今日は運命の日になるかも知れない。炎柱である煉獄槇寿郎も、いつもの任務とはまた違う緊張感を持って、今日という日を迎えていた。
だが、その事をまだ小さな杏寿郎に話す事はしなかった。息子が嬉しそうに自分に尋ねてくるほどに、槇寿郎の中には苛立ちにも似た思いがつのる。
「もう出る。話をしている時間はないのでな。杏寿郎、お前は鬼殺隊に興味を持たんでも良い。子供が大人の話に口を出すものではない」
父の口調の中に僅かな怒りを感じとった瞬間、父を怒らせてしまったかと思った。
「申し訳ありません!杏寿郎は父上のご無事のお戻りをお待ちしています! 」
父を見上げて心からの詫びを口にする息子と一瞬目が合うと、あどけなさの残る顔は可愛らしく、槇寿郎の胸には当たり前だが愛おしさも込み上げてくる。